力学

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力学の基礎(その7)

 現在2022年1月11日15時10分である。(この投稿は、ほぼ4170文字)

麻友「『力学の基礎』は、どれくらい進んだら、面白くなるの?」

私「今、第1章の1ページ進んだところなんだけど、第2章の60ページまで進まないと、面白くならない。第1章と、第2章は、Preliminaries (予備知識)で、本当の解析力学が、始まるのは、第3章の159ページから」

麻友「あっ、騙されてた。いつまで経っても、面白くならないんじゃない」

若菜「お父さんは、どういう積もりで、この本始めたんですか?」

私「この本の予備知識には、高度な数学をやる上で必要な、色々な定理が、纏めてあるんだ。だから、予備知識読むだけでも、意味がある。それに、ここはここで、面白い話も、紛れているんだ」

結弦「具体例を出しながら、分かるようにやってくれるんなら、いいけど」

私「早速、始めよう」


 私の訳

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 もし、{A}位相空間 {S} の部分集合であるとき、{A} の相対位相というものが、

{\mathscr{O}_A =\{U \cap A|U \in \mathscr{O}\}}

で定義される(これは {A} の位相になる(訳注:すなわち {\mathscr{O}_A} は、位相空間の開集合の条件を満たす。))。

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 グーグル翻訳

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Aが位相空間Sのサブセットである場合、Aの相対トポロジー

{\mathscr{O}_A =\{U \cap A|U \in \mathscr{O}\}}

(Aのトポロジー)によって定義されます。

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 原文をスキャンし、{\TeX} で、補ったもの

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If {A} is a subset of a topological space {S}, the relative topology on {A} is defined by

{\mathscr{O}_A =\{U \cap A|U \in \mathscr{O}\}}

(which is a topology on {A}).

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結弦「位相空間の開集合の条件って、何だっけ?」

私「そうだよ、いつ聞いても良い」

麻友「こうだったわね」

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1.1.1 定義

 位相空間とは、集合 {S} で、{S} の部分集合の集まりで、次の条件を満たす {\mathscr{O}} というものを併せ持っているものである。{\mathscr{O}} の元を、開集合という。

 (T1){\emptyset \in \mathscr{O}} かつ {S \in \mathscr{O}}

 (T2)もし、{U_1,U_2 \in \mathscr{O}} ならば、{U_1 \cap U_2 \in \mathscr{O}}

 (T3)開集合の任意個の和集合は、開集合である。

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若菜「そうすると、この条件を、1つずつチェックするわけですか?」

麻友「ところで、開集合の2個の共通部分が、開集合なら、開集合の任意個の共通部分も、開集合にならないの?」

私「そこは、みんな躓くところなんだ。『力学の基礎(その5)』で、

{(3,6) \cap [5,8)=\{x|3 < x < 6 \} \cap \{y|5 \leqq y< 8 \}=\{z| 5 \leqq z <6 \}}

{(3,6) \cup [5,8)=\{x|3 < x < 6 \} \cup \{y|5 \leqq y< 8 \} =\{z| 3 < z < 8 \}}

などを、やったけど、

{(3,6)=\{x|3 < x < 6 \}} は、開集合、

{[5,8 ]=\{y|5 \leqq y \leqq 8 \}} は、閉集合

などという話を、ちょっとしたね」

結弦「そうだった。任意個ということは、無限個ということを、想定しているんだろうなあ。だとすると、{n=0,1,2,3,\cdots} が、自然数を、取ることにして、開集合の、無限個の和集合、

{\displaystyle \bigcup_{n \in \mathbb{N}}  \biggl(3+\frac{1}{n+1},6-\frac{1}{n+1} \biggr)}

{\displaystyle = \biggl(3+\frac{1}{0+1},6-\frac{1}{0+1} \biggr) \bigcup \biggl(3+\frac{1}{1+1},6-\frac{1}{1+1} \biggr)}

{\displaystyle~~~ \bigcup \biggl(3+\frac{1}{2+1},6-\frac{1}{2+1} \biggr) \cdots }

{\displaystyle = \biggl(3+\frac{1}{1},6-\frac{1}{1} \biggr) \bigcup \biggl(3+\frac{1}{2},6-\frac{1}{2} \biggr) \bigcup \biggl(3+\frac{1}{3},6-\frac{1}{3} \biggr) \cdots}

{\displaystyle = \biggl(4,5 \biggr) \bigcup \biggl(3.5,5.5 \biggr) \bigcup \biggl(3.3333 \cdots ,5.6666 \cdots \biggr) \cdots}

は、・・・」

若菜「{\displaystyle \frac{1}{n+1}} は、いくらでも小さくなるのだから、{(3+0,6-0)} みたいになって、{(3,6)} と、元に戻るわね。つまり、今回に関して、開集合の無限個の和集合は、和集合になった」

私「それは、今回の場合、条件(T3)が、確認されたことになる」

結弦「なるほど」

麻友「じゃ、今度は、共通集合よ。

{\displaystyle \bigcap_{n \in \mathbb{N}} \biggl(3-\frac{1}{n+1},6+\frac{1}{n+1} \biggr)}

{\displaystyle = \biggl(3-\frac{1}{1},6+\frac{1}{1} \biggr) \bigcap \biggl(3-\frac{1}{2},6+\frac{1}{2} \biggr) \bigcap \biggl(3-\frac{1}{3},6+\frac{1}{3} \biggr) \cdots }

{\displaystyle = \biggl(4,5 \biggr) \bigcap \biggl(3.5,5.5 \biggr) \bigcap \biggl(3.3333,5.6666 \biggr) \cdots}

とした場合、・・・」

結弦「良く、そうすぐ思い付くなあ。でも、この場合、{(3-0,6+0)} みたいになって、全部の共通部分は、{[ 3,6 ]} となりそう」

若菜「あれっ、これ、閉集合に、なってません?」

麻友「計算は、間違えてないわよね」

私「そうなんだ。開集合の無限個の共通部分が、開集合にならない場合が、あるんだ。そこが、位相空間で、開集合を指定するやり方のポイントなんだ」

結弦「とすると、3個の共通部分なら、例えば、開集合 {A,B,C} として、2個の共通部分、{A \cap B} は、開集合で、{C} も、開集合だから、{(A \cap B) \cap C} から、3つの共通集合、{A \cap B \cap C} は、開集合となる。つまり、有限個の開集合の共通集合は、開集合だ。ということだけ、言えるんだ」

私「じゃあ、もうちょっと、演習を、してみよう。今度は、閉集合の無限個の和集合で、開集合になるものを、作ってみないか?」

若菜「あっ、できる!

{\displaystyle \bigcup_{n \in \mathbb{N}} \biggl[3+\frac{1}{n+1},6-\frac{1}{n+1} \biggr]}

とすれば、{[ 3+0,6-0 ] =(3,6)} となって、開集合になる」

麻友「若菜が、電光石火。私の娘だわ」

私「今日は、色々分かって、面白かっただろう。位相空間論というのは、その先の、位相幾何学トポロジー)に、地続きに繋がっていて、どんどん楽しくなる。本文の相対位相の話は、今日はできなかったが、次回以降に補足する。今日は、ここまで」

若菜・結弦「バイバーイ」

麻友「バイバイ」

私「バイバイ」

 現在2022年1月11日19時34分である。おしまい。