力学

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コラム~第9回 力学的エネルギーを振り返って~

 現在2019年11月24日11時31分である。

麻友「このコラムは、終わりにしていいと、言ったけど」

私「せっかくあそこまでやったんだ。ちょっと、飛ばしすぎたところを、復習して終わろう」

麻友「例えば、どんなこと?」

私「運動エネルギーとか、位置エネルギー、とか出てきたけど、なぜそんなものを、考える必要が、あったか、とか」

麻友「そうね。運動エネルギーと位置エネルギーの和が、力学的エネルギーと言って、それが、保存するって、どういうことか、分かってない」

私「そういう風に、言葉にできるのは、麻友さんが特待生だからだけど、まず、力学的エネルギー保存の式、

{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2+mgh=0}

だけど、これは、速さがゼロのときを、高さゼロにしている、というようなことを、言った」

麻友「そうね。速さ {v=0} のとき、{m}{g} も、ゼロではないから、{h=0} だと太郎さんは、言った」


私「これ、基準をずらせるんだよ。麻友さんは、本当は、身長156cmだろ。つまり {1.56\mathrm{m}} だ。だから、{h}{1.56\mathrm{m}} を入れたとき、 {h} の部分が、ゼロになった方がいい」

麻友「どういうこと?」

私「つまり、

{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2+mg(h-1.56)=0}

とするということ。この {h} は、新しい {h} だよ」

麻友「私が、ボールを投げる瞬間の高さを、そのまま、{h=1.56 \mathrm{m}} と、代入できるということ?」

私「そうだね。身長と、手の高さを、ほぼ同じとしてね」

麻友「こんなことして、何になるの?」

私「この式は、

{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2+mgh=1.56mg}

と、書ける。右辺は、定数だね」

麻友「いきなり、変な変形しないでよ。ああ、でもそう」

私「そうだとすると、ボールが飛んでいる間、左辺は一定。変化しないということを、保存すると、物理学では、言うんだ」

麻友「だから、力学的エネルギー保存の式と。その効用は?」

私「一番顕著なのは、麻友さんが、真上に向かって、秒速10メートル、つまり時速36キロで、ボールを投げ上げた場合、何メートルまで上がるか? という問題を解く場合」

麻友「また、微分とか、使うの?」

私「それが、ただ次のことをするだけで、いいんだ

{\displaystyle \frac{1}{2}m\mathrm{kg}(10\mathrm{m/s})^2+1.56 \mathrm{m} m\mathrm{kg} 9.8 \mathrm{m/s^2}=0+x m\mathrm{kg} 9.8 \mathrm{m/s^2}}

ボールの質量は、全部にかかってるから、割り算できて、

{\displaystyle \frac{1}{2}(10\mathrm{m/s})^2+1.56 \mathrm{m} 9.8 \mathrm{m/s^2}=0+x 9.8 \mathrm{m/s^2}}

この計算する?」

麻友「確かに、スマホで、計算できる

{50\mathrm{m^2/s^2}+15.288 \mathrm{m^2/s^2}=9.8x\mathrm{m/s^2}}

として、

{(50+15.288)\mathrm{m^2/s^2}=9.8\times x\mathrm{m/s^2}}

{9.8x=65.288\mathrm{m}}

だから、

{x=6.662\cdots \mathrm{m}}

ほぼ、6.5メートル。2階の屋根に届くかどうか。有り得ない高さでは、ないわね。太郎さん、こんなのサラッと計算できるの?」

「いや、今、麻友さんのために計算してて、最初、52メートルと、出た。流石にこれは、無理だろうと検算していって、

{50\mathrm{m^2/s^2}+15.288 \mathrm{m^2/s^2}=9.8x\mathrm{m/s^2}}

の式で、{500\mathrm{m^2/s^2}} としているのに、気付いて、計算しなおした」

麻友「よく計算し直す気になるわね」

私「麻友さん相手だから」

麻友「はいはい。じゃあ、教科書みたいだけど、応用問題とか、やらないの?」

私「じゃあ、こんなのどうだろう」


 応用問題

 埼玉県秩父の蛹沢不動滝(さなぎさわふどうだき)は、1段目12メートル、2段目14メートル、3段目50メートルの落差があります。3段76メートル下った水は、摂氏何度、水温が上がるでしょう。


麻友「私が、埼玉県人だから、蛹沢不動滝を使ったのね。でも、滝で落下すると、温度が上がるなんて、知らないし、・・・。でも、特待生がそれじゃ、駄目よね。どうせ、単位体積で、測っていいんだから、{1\mathrm{kg}} で、考える。位置エネルギーが、

{U=mgh}

というのを、使わせたいのよね。あっ、そうか、質量は、{1\mathrm{kg}} 、重力加速度は、{g=9.8 \mathrm{m/s^2}} 高さは、{76 \mathrm{m}} と、分かっているんだから、

{U=1\times 9.8 \times 76 \mathrm{kgm^2/s^2}}

計算して、

{U=744.8 \mathrm{kgm^2/s^2}}

って、これが、温度とどう関係あるの?」

私「麻友さん。花嫁修業って、したことないかな? {\mathrm{kgm^2/s^2}} って、ジュールっていう単位なんだよ。記号は、{\mathrm{J}}

麻友「えっ、ジュールって、知ってる。確か、エネルギーが、{1\mathrm{cal}=4.2\mathrm{J}} と、換算できるって」

私「その知識使ってごらん」

麻友「{1\mathrm{cal}} は、{1\mathrm{cc}} の水の温度を1度上げる、熱量。つまり、熱量とエネルギーって、同じことの別な言い方なのね。今、水が滝から落ちて、

{U=744.8 \mathrm{kgm^2/s^2}=744.8 \mathrm{J}}

のエネルギーが、生まれた。これを、{4.2\mathrm{J}} で、割ると、

{\displaystyle \frac{744.8}{4.2}=177.33\cdots }

だから、{1\mathrm{cc}} の水が、{177.33\mathrm{cal}} の熱で、摂氏 {177.33} 度、温度が上がる。って、沸騰しちゃうわよね」

私「そう。高校2年のとき、私も、その間違いをした。計算は、合ってるはずなのに、どう考えても沸騰するほど熱がでる。これなら、原子力発電所なんて、いらない」

麻友「太郎さんも、間違えたの? どうやって、間違いを見つけたの?」

私「クラスの他の子が、気付いたんだよね」

麻友「何に?」

私「麻友さん最初に、

『どうせ、単位体積で、測っていいんだから、{1\mathrm{kg}} で、考える』

って、言ったよね」

麻友「ああ、そうか。{1\mathrm{kg}} なら、牛乳の大きいパック {1000\mathrm{cc}} だ。つまり、{1000\mathrm{cc}} に、{177.33\mathrm{cal}} の熱だから、{0.17733\ {}^{\circ}\mathrm{C}} しか、水温は、上がらないのね」

私「こういう風に、物理学って、日常のことの中に、しっかり、根を下ろしている。さっきの応用問題、私の前では、


答え {0.17733\ {}^{\circ}\mathrm{C}}


で、いいけど、正式には、有効数字というものを意識して、


答え {0.18\ {}^{\circ}\mathrm{C}}


などとしなければ、ならない。でも、麻友さんは、当分そんなこと、気にしなくていいよ」


麻友「太郎さん。エネルギーの式を、

{\displaystyle E=\frac{mc^2}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}}

と、お父さんの前でも、今回も、見せてくれたじゃない」

私「うん」

麻友「このルートが、やっかいじゃない。両辺自乗しちゃったら? こういう風に

{\displaystyle E^2=\frac{m^2c^4}{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}

どう?」

私「その線で行くと、もっと行かれる。エネルギーの他に、運動量というものが、あるんだ。これは、フィギュアスケートの試合で運動した量という意味のものではなく、エネルギーと同様に、

{\displaystyle p=\frac{mv}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}}

と、定義されるものだ。質量掛ける速度に、ほぼ等しい。ルートの中が、相対性理論による補正項」

麻友「つまり、普通は、

{p=mv}

ということ?」

私「そういうこと。さて、麻友さんが外した、ルートと同様、これも、自乗する。

{\displaystyle p^2=\frac{m^2v^2}{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}

分母をはらう。

{\displaystyle p^2\biggl( 1-\frac{v^2}{c^2} \biggr)=m^2v^2}

右辺を、分母分子に {c^2} をかけて変形。

{\displaystyle p^2\biggl( 1-\frac{v^2}{c^2} \biggr)=m^2c^2\frac{v^2}{c^2}}

{\displaystyle \frac{v^2}{c^2}} で、まとめて、

{\displaystyle p^2-p^2\frac{v^2}{c^2}=m^2c^2\frac{v^2}{c^2}}

{\displaystyle p^2=\biggl( p^2+m^2c^2 \biggr) \frac{v^2}{c^2}}

割り算して、

{\displaystyle \frac{p^2}{p^2+m^2c^2}=\frac{v^2}{c^2}}

 これを、次の式に代入。

{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}=1-\frac{p^2}{p^2+m^2c^2}=\frac{p^2+m^2c^2}{p^2+m^2c^2}-\frac{p^2}{p^2+m^2c^2}=\frac{m^2c^2}{p^2+m^2c^2}}

 さて、この結果を、麻友さんの自乗した式に代入すると、

{\displaystyle E^2=\frac{m^2c^4}{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}=\frac{m^2c^4}{\displaystyle \frac{m^2c^2}{p^2+m^2c^2}}}

    {=c^2(p^2+m^2c^2)=p^2c^2+m^2c^4}

となる。この最後の式、

{\displaystyle E^2=p^2c^2+m^2c^4}

これが、エネルギーの厳密な式だ。この計算は、放送大学の相対論の教科書を参考にした。

岡村浩『相対論』(放送大学教育振興会

相対論 (放送大学教材)

相対論 (放送大学教材)


麻友「もう、速さ {v} は、現れないのね」

私「そうなんだ。私が、2013年に、質量再定義のための、論文を発表しようとしたとき、X指定の親友から、運動量は保存量だが、速度は保存量ではないから、このままでは、測定できないと、言われた。私に取っては、測定できないなどという概念に慣れていなかったので、目から鱗だった」

麻友「いいお友達がいるのね」

私「うん。その通り。それで、麻友さんの自乗するというアイディアは、結果的に、例のおつりがその運動量で書けることを、明らかにした。これが、最終形だ。さすが、特待生」

麻友「でも、ここまでやったのは、太郎さんには、何か魂胆があったのでしょう」

私「エヘヘ、場の量子論を制覇しよう!のブログで、第3回の『量子力学概論(その3)』で、テキストの2ページの写真に、この式が写っているんだ」

麻友「えっ、量子力学で使おうと思って、証明してたの?」

私「昨日の晩、思いついたんだ。あれ、説明できるなって」

麻友「分かってませんからねーだ」

私「じゃあ、今日は、ここまでにするか」

麻友「じゃあね」

私「バイバイ」

 現在2019年11月24日19時40分である。おしまい。

コラム~第8回 テイラー展開~

 現在2019年11月22日15時38分である。

麻友「あっ、テイラー展開って、ほとんどオールマイティな武器だって言ってた、あれよね」

私「今回、それを、使うので、ある程度真面目に証明する」

麻友「『ある程度真面目』とは?」

私「完全に証明しようと思うと、『解析入門Ⅰ』の101ページくらいまで、勉強しなければ、ならない。今の麻友さんには、無理だろう」

麻友「そうすると、あらかじめ、何かを仮定するのね?」

私「そうだけど、本物も、ちょっと見せておこう」


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 定理2.10(テイラーの定理

{\mathbb{N} \ni n  \geqq 1} とする.区間 {[a,x]=I} (または {[x,a]} )で {n}微分可能な実数値関数 {f} に対して,

(2.7) {\displaystyle f(x)=f(a)+\frac{f'(a)}{1!}(x-a)+\frac{f''(a)}{2!}(x-a)^2+\cdots}

         {\displaystyle +\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}+R_n(x)}

によって {R_n(x)} を定義するとき,

(2.8) {\displaystyle R_n(x)=\frac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^n}

となる {c \in \stackrel{\circ}{I}} が存在する。(一般に {x} を変化させれば {c} も変化する.)


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(杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)p.99-100 から引用)

解析入門 ?(基礎数学2)

解析入門 ?(基礎数学2)

麻友「こんなの、見せられても、分からない」

私「それは、私も同じだ。こういうのは、具体的に、数字を入れて、試してみるんだ」

麻友「太郎さんは、数学が好きだから、試そうという気にもなるでしょうけど、数学が嫌いな人に取って、そんなこと、する気にもならない」

私「そうだよね。『数学のやりなおしのための・・・』とか、『数学が嫌いな人のための・・・』という本があふれているけど、数学が嫌いな人は、手に取ろうとも思わない」

麻友「太郎さん、分かってて、私に書いてきているの?」

私「でもね、一度、数学に目覚めると、そのいやだったことが、いやでなくなるんだよ。とにかく、やってみよう」

麻友「まったく」


私「まず、上の式を複雑にしているのは、{a} だ。だから、{a=0} としてしまおう」

{\displaystyle f(x)=f(0)+\frac{f'(0)}{1!}x+\frac{f''(0)}{2!}x^2+\cdots}

   {\displaystyle +\frac{f^{(n-1)}(0)}{(n-1)!}x^{n-1}+R_n(x)}


   {\displaystyle R_n(x)=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n}

麻友「そんなこと、して良かったの?」

私「数学では、駄目だったら、やり直せるんだろ」

麻友「そうだった。どんなときも、犠牲者は、ゼロなんだった」

私「一応、言っておくと、テイラー展開という言葉と、テイラーの定理という言葉は、使い分けられている。テイラーの定理といった場合には、上の式の、

{\displaystyle R_n(x)=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n}

という最後の項を、計算に含める。それに対し、テイラー展開といった場合、この最後の項、剰余項(じょうよこう)というのだが、これが、{n} が大きくなったときに、{0} に収束する関数を考えているという前提があり、剰余項を無視して、無限に続く、級数で、関数が、表せると仮定する」

麻友「級数って、いうのね。こういうたくさん足すの」

私「そう。無限級数

麻友「必ず、無限級数で、表せるの?」

私「数学は、そう甘くない。無限級数で表せない関数も、たくさん存在する。ホーキング・エリスのとき、この宇宙が、性質の良い関数でできていたら、宇宙の最初の特異点を解剖できるけど、性質の悪い関数でできていたら、どうなっているか分からないというような話もした。ああいうことだよ」

麻友「つまり、性質の良い関数だったら、無限級数で、表せるのね」

私「そういうことだ。ところで、今、無限級数で、表したいのは、

{f(x)=(1+x)^n}

という関数だ」

麻友「ああ、お父さんも知ってた、

{(1+x)^n \approx 1+nx}

ね」

私「そう。良く覚えていたね。でも、今回は、そのさらに先を使う」

麻友「さらに、先ですって?」

私「まず、

{f(x)=(1+x)^n}

として、この関数が、

{\displaystyle f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+\cdots}

と、無限級数で、表されたとする。この {a_0,a_1,a_2,a_3,a_4} は、どうやって求めたらいい?」

麻友「あっ、私、分かる。オイラーの公式を求めたときのだ。こうするのよ」

{f(0)=(1+0)^n=1^n=1}

一方、

{f(0)=a_0+a_1\times 0+a_2\times 0^2 +a_3 \times 0^3 +a_4 \times 0^4+\cdots}

だから、

{1=a_0}

と、求まる。

 次が、太郎さんが、なかなかこの話を持ち出せなかった理由。両辺、微分するのよね。

{f(x)=(1+x)^n}

微分・・・。これ、どうやるの?」

私「確かに、いきなり麻友さんに、これは、無理だね。ちょっと、いい加減だけど、{z=1+x} と、置いてごらん?」

麻友「

{f(x)=(1+x)^n}

で、{z=1+x} と置くと、

{f(x)=z^n}

ああ、これなら、微分できる。

{f'(x)=nz^{n-1}}

だわ」

私「ただ、それじゃ、本当は、駄目なんだ」

麻友「なんで?」

私「{f'(x)} というのは、接線の傾きとも言ったように、{\displaystyle \frac{df}{dx}} と表せるものなんだ」

麻友「それで?」

私「麻友さんが、求めたのは、{z} についての微分だから、{\displaystyle \frac{df}{dz}} になっているんだよ」

麻友「分母が、違うというのね? じゃあ、

{\displaystyle \frac{df}{dx}=\frac{df}{dz} \frac{dz}{dx}}

というように、分母分子に、{dz} をかけて、

{\displaystyle \frac{dz}{dx}=\frac{d}{dx}(1+x)=1}

だから、

{\displaystyle \frac{df}{dx}=\frac{df}{dz}\times \frac{dz}{dx}=\frac{df}{dz}\times 1=\frac{df}{dz}}

として {z}微分しても、同じよって、証明したら?」

私「この問題は、この場合は、それで上手く行く。でも、いつも上手く行くわけではないことを、覚えていてね」

麻友「どういうとき、上手く行かないの?」

私「特待生だから、教えておく。

{\displaystyle \frac{dz}{dx}=\frac{d}{dx}(1+x)=1}

と、麻友さんは、計算したけど、これが、いつでも、{1} になるとは限らない」

麻友「あっ、そうか。それで、微分の仕方が分かったから、

{\displaystyle f(x)=(1+x)^n}

微分が、

{f'(x)=(z^n)'=nz^{n-1}=n(1+x)^{n-1}}

と、求まる。それを使って、級数の、今度は、{a_1} が、求められる。

{n(1+x)^{n-1}=n\times 1^{n-1}=n}

と、

{a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+\cdots}

微分して、

{a_1+2a_2x+3a_3x^2+4a_4x^3+\cdots}

で、{x=0} として、

{n=a_1}

だわね。あれっ、{a_0=1} だったから、後ろを無視すると、

{(1+x)^n =1+nx+\cdots}

になる。お父さんの言ってた式じゃない」

私「だから、テイラー展開は、ほとんどオールマイティな武器だって、言っただろ」

麻友「もう、分かったわよ。太郎さんのおつりがついてくるって、この無限級数の、後ろの方のことでしょ」

私「間違えたら、指摘してあげるから、計算してごらん」

麻友「まず、

{f'(x)=n(1+x)^{n-1}}

だった。もう一回微分すると、括弧の中を {z} と思って、

{f''(x)=n(n-1)(1+x)^{n-2}}

この左辺は、なんて読むの?」

私「『微分積分入門』の48ページに、

{y'',f''(x)} (エフ・ツウダッシュ・エックスと読む)

{\displaystyle \frac{d}{dx}f'(x),\frac{d^2y}{dx^2}} (デイツウ・ワイ・デイ・エックスツウと読む)

とある」

麻友「本当に、親切な本ね。独学するには、最適な本」

微分・積分入門 (1964年)

微分・積分入門 (1964年)

麻友「一方、無限級数の方は、

{a_1+2a_2x+3a_3x^2+4a_4x^3+\cdots}

を、微分して、

{2a_2+3\times 2 a_3x+4\times 3 a_4x^2+\cdots}

だから、

{f''(x)=n(n-1)(1+x)^{n-2}=2a_2+3\times 2 a_3x+4\times 3 a_4x^2+\cdots}

となって、{x=0} と、置くと、

{f''(0)=n(n-1)1^{n-2}=2a_2+3\times 2 a_3\times 0+4\times 3 a_4\times 0^2+\cdots}

で、左辺は、1を何回掛けても、1だから、

{n(n-1)=2a_2}

となる。だから、

{\displaystyle a_2=\frac{n(n-1)}{2}}

と、求まる。どうよ?」

私「もう一回だけやって」

麻友「はいはい。

{f''(x)=n(n-1)(1+x)^{n-2}}

を、もう一回微分すると、

{f''(x)=n(n-1)(n-2)(1+x)^{n-3}}

{x=0} とすると、

{f'''(0)=n(n-1)(n-2)}

となる。一方、無限級数は、

{f''(x)=2a_2+3\times 2 a_3x+4\times 3 a_4x^2+\cdots}

の両辺微分して、

{f'''(x)=3\times 2\times 1 a_3+4\times 3\times2 a_4x+\cdots}

だ。両方の式を等号で結んで、{x=0}

{f'''(0)=n(n-1)(n-2)=3\times 2\times 1 a_3+4\times 3\times2 a_4 \times 0+\cdots}

だから、

{\displaystyle a_3=\frac{n(n-1)(n-2)}{3\times 2\times 1}}

だわ。もう分かった、こういうことよ。右辺の無限級数{x^m} の項の係数 {a_m} は、

{\displaystyle a_m=\frac{f^{(m)}(0)}{m!}}

なのよね。{m}微分は、{f^{(m)}} で、いいわね」

私「良く頑張った。そこまで、できたのなら、ご褒美を、あげよう」

麻友「何を、くれるの?」

私「{a_0,a_1,a_2,a_3} を求めたんだね。それで、問題の関数を、表してごらん」

麻友「えーと、問題の関数とは、

{f(x)=(1+x)^n}

だった。これを、無限級数の途中までで、表す。

{\displaystyle (1+x)^n=1+nx+\frac{n(n-1)}{2}x^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^3+\cdots}

こうかしら?」

私「良くできてる。さて、麻友さんのお父さまは、技術者としても、電気に詳しい人のようだ」

麻友「どうして、そんなことが、分かるの?」

私「相対性理論のブログの『結婚をシミュレート(その7)』で、私が、

{\displaystyle E=\frac{mc^2}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}}

という式を、見せたとき、『ローレンツ変換の式だな』と、おっしゃった」


麻友「ああ、そういうこともあった。あの式の類推で、太郎さんは、電荷が変化して見えるという説明をした」

私「あのとき、つまり高校3年生のクリスマスの頃、あの近似が使えたのには、理由があった。私が、高校2年生のときの物理の担任は、もう亡くなられているので、実名を出すが、林寛治(はやし かんじ)先生という人だった。多分、分かってくれない生徒のために、授業をするのが、つまらなかったのだろう。試験のたびに、採点した答案を返すときに、点数が悪い生徒の答案を、放り投げるのだ。私は、やめさせようか、とも思ったが、何と注意すれば良いのか、『先生。それは良くない』と言ったものなのかどうか、困っていた。その先生も、私の物理の才能にはすぐ気付き、先生の部屋に、付いてこいと言った」

麻友「居残り勉強?」

私「その先生は、相対性理論の本を書きたいと思っていたのだ。だから、私に、相対性理論を勉強させて、一緒に学ぶ友に、したかったのだ」

麻友「相対性理論の本を書きたいなんて、太郎さんみたい。それで、どうなったの?」

私「もう、中学で、特殊相対性理論は、やってあり、一般相対性理論は、大学へ行かなきゃ、無理だろうと思っていたから、私にとっては、迷惑だったが、先生が、コピーを渡してきた、井田 幸次郎『物理空間とは何か』(三省堂新書)という本を、読んで、分かりにくかった点を指摘した。私に取っては、余計な本を…という思いだったが、この本の134ページに、

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エネルギーの慣性

質量の速度にたいする変化は、式(4-1)によって、

{\displaystyle \frac{m_0}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}}

の形で与えられている。ところが、

{\displaystyle \frac{1}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}=\biggl(1-\frac{v^2}{c^2} \biggr)^{-\displaystyle \frac{1}{2}}}

となるから、{v}{c} にあまり近くなくて、その二乗の項までとれば実用的にじゅうぶんであるときには、質量は、

{\displaystyle m=m_0\biggl( 1+\frac{1}{2}\frac{v^2}{c^2} \biggr)}

によって表わすことができることになる。


*******************************
以上134ページより


とあった。私は、高校1年で、微分テイラー展開も知っていたので、この近似が分からなかったわけではないが、『ローレンツ変換に、こんな近似ができるんだ』と、そのとき、びっくりした」

麻友「そのアイディアが、高校3年生のクリスマス後の、進展につながったのね」

私「さあ、麻友さん。もう機は熟してるんだよ」

麻友「あっ、エネルギー。{E=mc^2} 。そして、

{\displaystyle E=\frac{mc^2}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}}

ね」

私「近似計算を、先にやった方が、速いと思うよ」

麻友「えっとー。

{f(x)=(1+x)^n}

で、{\displaystyle x=-\frac{v^2}{c^2}}

と、表せて、ルートということは、2分の1乗。それが、分母にあるんだから、マイナス2分の1乗。つまり、{\displaystyle n=-\frac{1}{2}} だから、

{\displaystyle (1+x)^n=1+nx+\frac{n(n-1)}{2}x^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}x^3+\cdots}

で、

{\displaystyle (1+x)^{-\frac{1}{2}}=1-\frac{1}{2}x+\frac{\displaystyle \biggl(-\frac{1}{2}\biggr) \biggr(-\frac{3}{2}\biggr)}{2}x^2+\frac{\displaystyle \biggl(-\frac{1}{2} \biggr)\biggl(-\frac{3}{2} \biggr) \biggl(-\frac{5}{2} \biggr)}{3!}x^3+\cdots}

となる。

 計算して、

{\displaystyle (1+x)^{ -\frac{1}{2}}=1-\frac{1}{2}x+\frac{3}{8}x^2+\frac{\displaystyle -\frac{15}{8}}{3!}x^3+\cdots}

だから、整理して、

{\displaystyle (1+x)^{ -\frac{1}{2}}=1-\frac{1}{2}x+\frac{3}{8}x^2-\frac{5}{16}x^3+\cdots}

 ここまで、簡単化して、{\displaystyle x=-\frac{v^2}{c^2}} を、代入。

{\displaystyle \biggl(1-\frac{v^2}{c^2} \biggr)^{- \frac{1}{2}}=1-\frac{1}{2} \biggl(-\frac{v^2}{c^2} \biggr)+\frac{3}{8}\biggl(\frac{v^4}{c^4} \biggr)-\frac{5}{16}\biggl(-\frac{v^6}{c^6} \biggr)+\cdots}

まで、求めた」

私「エネルギーは?」

麻友「あっ、そうか。

{\displaystyle E=\frac{mc^2}{\sqrt{\displaystyle 1-\frac{v^2}{c^2}}}= mc^2 \displaystyle \biggl(1-\frac{v^2}{c^2} \biggr)^{- \frac{1}{2}}}

{\displaystyle =mc^2+mc^2\frac{1}{2} \biggl(\frac{v^2}{c^2} \biggr)+mc^2\frac{3}{8}\biggl(\frac{v^4}{c^4} \biggr)+mc^2\frac{5}{16}\biggl( \frac{v^6}{c^6} \biggr)+\cdots}

と計算して、はっ!

{\displaystyle E=mc^2+mc^2\frac{1}{2} \biggl( \frac{v^2}{c^2} \biggr)+mc^2\frac{3}{8}\biggl(\frac{v^4}{c^4} \biggr)+mc^2\frac{5}{16}\biggl(\frac{v^6}{c^6} \biggr)+\cdots}

の第2項が、

{\displaystyle E=mc^2+\frac{1}{2} m v^2 +m\frac{3}{8}\biggl(\frac{v^4}{c^2} \biggr)+m\frac{5}{16}\biggl(\frac{v^6}{c^4} \biggr)+\cdots}

となって、

{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2}

だから、運動エネルギー」

私「そう。それが、ご褒美だよ」

麻友「どういうこと? 今日の話の中に、運動エネルギーなんて、なかった。どうして、出てきたの?」

私「アインシュタイン特殊相対性理論が、現実の世界を、いかに良く反映しているか、ということだよ。ニュートンたちが、17世紀に、実験に基づいて、導入した、運動エネルギーというものが、アインシュタインの式から、自然に出てきたんだ」

麻友「じゃあ、近似で、さらに後の項は? あっ、そうか。これが、太郎さんの言ってた、付いてくる、おつりか」

私「大学の理学部というところは、実験やっているか、こういう計算をやってるところなんだよ」

麻友「私、太郎さんという人が、前よりちょっと分かった。薬飲まないと、死にかけることが、分かってるのに、私への記事書くのに夢中になって、もう1時10分なのに、まだ、書いてる。それくらい、数学と物理学に、命懸けてる。私にも、多分、命懸けなのだろう。ねえ、ひとりの人だけ、選ばなければ、いけないのかしら?」

私「もう、結婚なんて、やめようよ。正式に体の関係を、持てる人、なんて、決めて、どうするんだろうね。麻友さんが、まったく無報酬で、身体を提供したら、もちろん、嫌でない範囲でね、そうしたら、怒る人いるのだろうか?」

麻友「この話が、通じるのは、一部の人だけよ。ありがとう。おつりの説明、分かったわ。このコラム、おしまいにして、いいわ」

私「じゃ、おやすみ」

麻友「おやすみ」

 現在2019年11月23日1時25分である。おしまい。

コラム~第7回 なぜ4倍?~

 現在2019年11月21日20時24分である。

麻友「運動エネルギーと、位置エネルギー、ついに求めたわね」

私「具体的には?」

麻友「運動エネルギーは、

{\displaystyle T=\frac{1}{2}mv^2}

で、位置エネルギーは、

{U=mgh}

だったわね」

私「{T} とか {U} は、絶対 {T} じゃなきゃいけない、とかいうようなものではない。私は、ランダウの本の11ページを、参考にしただけ」

麻友「ストップしている、この本ね」

力学 (増訂第3版)   ランダウ=リフシッツ理論物理学教程

力学 (増訂第3版) ランダウ=リフシッツ理論物理学教程

私「もう、私自身は、テータ関数だの、ハミルトン=ヤコビの方程式だのという、取扱いが微妙なものを除けば、この本を通読できるんだけど、もうちょっと、数学を勉強しておきたい」

麻友「太郎さんの中で、百点満点じゃないと、そのものを、卒業できないのね」


私「今日は、一気に、運動エネルギーに、初登頂しちゃおうか?」

麻友「おっ、本気になった」

私「上で言ってるように、運動エネルギーというものは、

{\displaystyle T=\frac{1}{2}mv^2}

と、表される。覚えているかどうか、分からないけど、妹へのメールで、私が、


*******************************

ご主人の衝撃が4倍、というのは、物理学で、運動エネルギーが
1
─mv^2
2

二分の一えむぶいにじょう

となることが、実験で分かっているので、正しいのです。

*******************************


と、書いているのは、これだ」

麻友「あっ、そうじゃない。太郎さん、私に、説明したんだ。私、太郎さんに鍛えられてるから、分かるわよ。{v} は、速度でもあるけど、速さでもある。スピードが、時速36キロなら、秒速10メートル。車が重さ、うーん、例えば1トンとすると、1,000kgだから、

{\displaystyle \frac{1}{2}mv^2=\mathrm{\frac{1}{2}1,000kg\times(10m/s)^2=500kg \times 100 \frac{m^2}{s^2}=50,000kgm^2/s^2}}

と、求まる。この求め方から言って、速さが2倍の時速72キロ、つまり、秒速20メートルになると、400をかけることになる。当然、運動エネルギーは、4倍。車体の重さが2倍になっても、運動エネルギーは、2倍になるだけだけど、速さが2倍になると、運動エネルギーが、4倍になるって、本当だ」

私「うわー、やってくれたな。ひとまず、今日は、ここまでに、しよう」

麻友「計算は、合ってる?」

私「見たところ、間違ってない」

麻友「じゃ、おやすみ」

私「おやすみ」

 現在2019年11月21日21時22分である。おしまい。