現在2019年11月22日15時38分である。
麻友「あっ、テイラー展開って、ほとんどオールマイティな武器だって言ってた、あれよね」
私「今回、それを、使うので、ある程度真面目に証明する」
麻友「『ある程度真面目』とは?」
私「完全に証明しようと思うと、『解析入門Ⅰ』の101ページくらいまで、勉強しなければ、ならない。今の麻友さんには、無理だろう」
麻友「そうすると、あらかじめ、何かを仮定するのね?」
私「そうだけど、本物も、ちょっと見せておこう」
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定理2.10(テイラーの定理)
とする.区間 (または )で 回微分可能な実数値関数 に対して,
(2.7)
によって を定義するとき,
(2.8)
となる が存在する。(一般に を変化させれば も変化する.)
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(杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)p.99-100 から引用)
- 作者: 杉浦光夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
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麻友「こんなの、見せられても、分からない」
私「それは、私も同じだ。こういうのは、具体的に、数字を入れて、試してみるんだ」
麻友「太郎さんは、数学が好きだから、試そうという気にもなるでしょうけど、数学が嫌いな人に取って、そんなこと、する気にもならない」
私「そうだよね。『数学のやりなおしのための・・・』とか、『数学が嫌いな人のための・・・』という本があふれているけど、数学が嫌いな人は、手に取ろうとも思わない」
麻友「太郎さん、分かってて、私に書いてきているの?」
私「でもね、一度、数学に目覚めると、そのいやだったことが、いやでなくなるんだよ。とにかく、やってみよう」
麻友「まったく」
私「まず、上の式を複雑にしているのは、 だ。だから、 としてしまおう」
麻友「そんなこと、して良かったの?」
私「数学では、駄目だったら、やり直せるんだろ」
麻友「そうだった。どんなときも、犠牲者は、ゼロなんだった」
私「一応、言っておくと、テイラー展開という言葉と、テイラーの定理という言葉は、使い分けられている。テイラーの定理といった場合には、上の式の、
という最後の項を、計算に含める。それに対し、テイラー展開といった場合、この最後の項、剰余項(じょうよこう)というのだが、これが、 が大きくなったときに、 に収束する関数を考えているという前提があり、剰余項を無視して、無限に続く、級数で、関数が、表せると仮定する」
麻友「級数って、いうのね。こういうたくさん足すの」
私「そう。無限級数」
麻友「必ず、無限級数で、表せるの?」
私「数学は、そう甘くない。無限級数で表せない関数も、たくさん存在する。ホーキング・エリスのとき、この宇宙が、性質の良い関数でできていたら、宇宙の最初の特異点を解剖できるけど、性質の悪い関数でできていたら、どうなっているか分からないというような話もした。ああいうことだよ」
麻友「つまり、性質の良い関数だったら、無限級数で、表せるのね」
私「そういうことだ。ところで、今、無限級数で、表したいのは、
という関数だ」
麻友「ああ、お父さんも知ってた、
ね」
私「そう。良く覚えていたね。でも、今回は、そのさらに先を使う」
麻友「さらに、先ですって?」
私「まず、
として、この関数が、
と、無限級数で、表されたとする。この は、どうやって求めたらいい?」
麻友「あっ、私、分かる。オイラーの公式を求めたときのだ。こうするのよ」
一方、
だから、
と、求まる。
次が、太郎さんが、なかなかこの話を持ち出せなかった理由。両辺、微分するのよね。
の微分・・・。これ、どうやるの?」
私「確かに、いきなり麻友さんに、これは、無理だね。ちょっと、いい加減だけど、 と、置いてごらん?」
麻友「
で、 と置くと、
ああ、これなら、微分できる。
だわ」
私「ただ、それじゃ、本当は、駄目なんだ」
麻友「なんで?」
私「 というのは、接線の傾きとも言ったように、 と表せるものなんだ」
麻友「それで?」
私「麻友さんが、求めたのは、 についての微分だから、 になっているんだよ」
麻友「分母が、違うというのね? じゃあ、
というように、分母分子に、 をかけて、
だから、
として で微分しても、同じよって、証明したら?」
私「この問題は、この場合は、それで上手く行く。でも、いつも上手く行くわけではないことを、覚えていてね」
麻友「どういうとき、上手く行かないの?」
私「特待生だから、教えておく。
と、麻友さんは、計算したけど、これが、いつでも、 になるとは限らない」
麻友「あっ、そうか。それで、微分の仕方が分かったから、
の微分が、
と、求まる。それを使って、級数の、今度は、 が、求められる。
と、
を微分して、
で、 として、
だわね。あれっ、 だったから、後ろを無視すると、
になる。お父さんの言ってた式じゃない」
私「だから、テイラー展開は、ほとんどオールマイティな武器だって、言っただろ」
麻友「もう、分かったわよ。太郎さんのおつりがついてくるって、この無限級数の、後ろの方のことでしょ」
私「間違えたら、指摘してあげるから、計算してごらん」
麻友「まず、
だった。もう一回微分すると、括弧の中を と思って、
この左辺は、なんて読むの?」
(エフ・ツウダッシュ・エックスと読む)
(デイツウ・ワイ・デイ・エックスツウと読む)
とある」
麻友「本当に、親切な本ね。独学するには、最適な本」
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麻友「一方、無限級数の方は、
を、微分して、
だから、
となって、 と、置くと、
で、左辺は、1を何回掛けても、1だから、
となる。だから、
と、求まる。どうよ?」
私「もう一回だけやって」
麻友「はいはい。
を、もう一回微分すると、
とすると、
となる。一方、無限級数は、
の両辺微分して、
だ。両方の式を等号で結んで、
だから、
だわ。もう分かった、こういうことよ。右辺の無限級数の の項の係数 は、
なのよね。 回微分は、 で、いいわね」
私「良く頑張った。そこまで、できたのなら、ご褒美を、あげよう」
麻友「何を、くれるの?」
私「 を求めたんだね。それで、問題の関数を、表してごらん」
麻友「えーと、問題の関数とは、
だった。これを、無限級数の途中までで、表す。
こうかしら?」
私「良くできてる。さて、麻友さんのお父さまは、技術者としても、電気に詳しい人のようだ」
麻友「どうして、そんなことが、分かるの?」
私「相対性理論のブログの『結婚をシミュレート(その7)』で、私が、
という式を、見せたとき、『ローレンツ変換の式だな』と、おっしゃった」
麻友「ああ、そういうこともあった。あの式の類推で、太郎さんは、電荷が変化して見えるという説明をした」
私「あのとき、つまり高校3年生のクリスマスの頃、あの近似が使えたのには、理由があった。私が、高校2年生のときの物理の担任は、もう亡くなられているので、実名を出すが、林寛治(はやし かんじ)先生という人だった。多分、分かってくれない生徒のために、授業をするのが、つまらなかったのだろう。試験のたびに、採点した答案を返すときに、点数が悪い生徒の答案を、放り投げるのだ。私は、やめさせようか、とも思ったが、何と注意すれば良いのか、『先生。それは良くない』と言ったものなのかどうか、困っていた。その先生も、私の物理の才能にはすぐ気付き、先生の部屋に、付いてこいと言った」
麻友「居残り勉強?」
私「その先生は、相対性理論の本を書きたいと思っていたのだ。だから、私に、相対性理論を勉強させて、一緒に学ぶ友に、したかったのだ」
麻友「相対性理論の本を書きたいなんて、太郎さんみたい。それで、どうなったの?」
私「もう、中学で、特殊相対性理論は、やってあり、一般相対性理論は、大学へ行かなきゃ、無理だろうと思っていたから、私にとっては、迷惑だったが、先生が、コピーを渡してきた、井田 幸次郎『物理空間とは何か』(三省堂新書)という本を、読んで、分かりにくかった点を指摘した。私に取っては、余計な本を…という思いだったが、この本の134ページに、
物理空間とは何か―相対性理論の成立 (1969年) (三省堂新書)
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エネルギーの慣性
質量の速度にたいする変化は、式(4-1)によって、
の形で与えられている。ところが、
となるから、 が にあまり近くなくて、その二乗の項までとれば実用的にじゅうぶんであるときには、質量は、
によって表わすことができることになる。
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以上134ページより
とあった。私は、高校1年で、微分もテイラー展開も知っていたので、この近似が分からなかったわけではないが、『ローレンツ変換に、こんな近似ができるんだ』と、そのとき、びっくりした」
麻友「そのアイディアが、高校3年生のクリスマス後の、進展につながったのね」
私「さあ、麻友さん。もう機は熟してるんだよ」
麻友「あっ、エネルギー。 。そして、
ね」
私「近似計算を、先にやった方が、速いと思うよ」
麻友「えっとー。
で、
と、表せて、ルートということは、2分の1乗。それが、分母にあるんだから、マイナス2分の1乗。つまり、 だから、
で、
となる。
計算して、
だから、整理して、
ここまで、簡単化して、 を、代入。
まで、求めた」
私「エネルギーは?」
麻友「あっ、そうか。
と計算して、はっ!
の第2項が、
となって、
だから、運動エネルギー」
私「そう。それが、ご褒美だよ」
麻友「どういうこと? 今日の話の中に、運動エネルギーなんて、なかった。どうして、出てきたの?」
私「アインシュタインの特殊相対性理論が、現実の世界を、いかに良く反映しているか、ということだよ。ニュートンたちが、17世紀に、実験に基づいて、導入した、運動エネルギーというものが、アインシュタインの式から、自然に出てきたんだ」
麻友「じゃあ、近似で、さらに後の項は? あっ、そうか。これが、太郎さんの言ってた、付いてくる、おつりか」
私「大学の理学部というところは、実験やっているか、こういう計算をやってるところなんだよ」
麻友「私、太郎さんという人が、前よりちょっと分かった。薬飲まないと、死にかけることが、分かってるのに、私への記事書くのに夢中になって、もう1時10分なのに、まだ、書いてる。それくらい、数学と物理学に、命懸けてる。私にも、多分、命懸けなのだろう。ねえ、ひとりの人だけ、選ばなければ、いけないのかしら?」
私「もう、結婚なんて、やめようよ。正式に体の関係を、持てる人、なんて、決めて、どうするんだろうね。麻友さんが、まったく無報酬で、身体を提供したら、もちろん、嫌でない範囲でね、そうしたら、怒る人いるのだろうか?」
麻友「この話が、通じるのは、一部の人だけよ。ありがとう。おつりの説明、分かったわ。このコラム、おしまいにして、いいわ」
私「じゃ、おやすみ」
麻友「おやすみ」
現在2019年11月23日1時25分である。おしまい。